何か言い残しているようで

 「名曲紹介」なんてタイトルをつけながら、「曲名失念」というのもなんだか格好悪いけど、この曲は本ブログにもたびたび登場するF原さんの手によるオリジナル。


”もう行くのかい 送らないから 元気で
 優しさなんて じゃまになるだけ
 今日までふたり ぎこちなかったけど
 すこしだけ おもいでをありがとう
 僕は 君を 愛しすぎて
 君は 僕を 愛しあぐね・・・”


 F原さんは2年の時まで、「錦会」のギタリストをやっていたのだけど、3年になってから以降は「弾き語りスト(?)」へ転身。この曲は、そんなF原さんが、ギター1本&ボーカルというシンプルなスタイルで紡いだ名曲です。
 僕がいちばん「きゅん」とくるのがサビ以下の展開。
 歌詞の「僕は君を愛しすぎて」と「君は僕を愛しあぐね」という二つのことばの連なりが美しい「対句」を成しているし、「君は僕を愛しあぐね」で用いられた”Ⅲm7(♭5)―Ⅵ7”というコード進行とメロディがせつなすぎるのです。
 何より、「愛しあぐね」の「あぐね」ということば。なんて広がりと奥行きのあることばでしょう・・・。今ではすっかり痩せ細ってしまった日本語だけれど、かつてはこんなにも肌理の細かい、繊細で情緒あふれることばがあったんですね。この言葉を紡ぎだしたF原さんにはほんとうに脱帽です。