久しぶりの「チョト イデスカ?」と「ホテル・カリフォルニア」

 先日仕事で外出した際、ヘルメット&スーツ姿で自転車を駆る2人組の外人さんがこちらに向かってきたので「うわあ、この人たち相変わらず頑張っているんだなあ」と半ば敬意を込めた眼差しを送っていたところ、すれ違いざまその外人さんとパチっと目が合ってしまいました。その瞬間、僕は久しぶりにあのお約束のフレーズを耳にすることになったのです。
「チョト イデスカ?」
 遠い異国の地で懸命に布教活動に勤しむ彼らには申し訳なかったけれど、僕は、「ごめんなさい、約束がありますので」と彼らに取り付く島さえ与えませんでした。このような「冷徹な」対応ができるのもたぶん齢を不惑まで重ねたおかげ。だけど若い頃はとてもこうはいかなかったのです。
 あれはそう・・・、僕がまだ琉大に入学したばかり頃でした。当時首里にあった男子寮の近くを歩いていると、先日と同じように、向こうからヘルメット&スーツ姿の若い外人さん2人組が自転車に乗ってこちらにやって来たかと思うと、突然、例のフレーズが耳にとびこんできたのでした。
「チョト イデスカ?」
 当時の僕は田舎から出てきたばっかり。そんな僕にとっては、青い眼をした外人さん自体珍しく、その外人さんから話しかけられたというだけですっかり舞い上がり、彼らの問いかけの意味など理解することなどできませんでした。「えっ、はい。僕ですか?なっ、何でしょうか」などと応じているうちに、あれよあれよと言う間に、「コレカラ アナタノ イエニ アソビニ イッテモ イデスカ」などととんでもない展開になったのでした。
 ということで、「僕の家」といっても幽霊屋敷のような首里のおんぼろ寮だったけど、僕はそこに彼らを招き入れることになりました。はじめのうちは、寮の住環境のあまりのひどさに、彼らもびっくりしてたみたいだったけど、たまたまその時T軽から借りていたイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」のレコードがあったので、彼らはそのジャケットを見るなり、「OH! ワタシモ “ホテゥ キャリフォーニア” ダイスキデス」と大喜び。さらに彼らはベッドサイドに立てかけてあった安物エレキ(G堅さんからいただいたもの)を目にするなり、「OH! アナタノ ギター ゼヒ キカセテクダサイ」と矢のような催促・・・。
 こうして僕は、生まれて初めて、ついに本場のアメリカ人を相手にギターを披露させられる破目に陥ってしまいました。曲はもちろん「ホテゥ キャリフォーニア(ホテル・カリフォルニア)」。まずはイントロ。チャンチャラスチャラチャチャン・・・。ところがその哀愁のアルペジオ、ほんとはカポを7フレットに装着して弾かないといけないのに、ノーカポでの演奏だったため演奏はしょぼく、彼らの反応も「なんかちょっと違うんでないの?」というような困り顔をしていたのが印象的でした。
 彼らの訪問は結局そんなこんなで1時間くらいだったでしょうか。その時彼らと交わしたその他の会話や、どうやって彼らの勧誘を断ったかなど、今ではすっかり忘れてしまったけれど、それが僕の国際交流「初経験」。僕のしょぼいカポなし「ホテ・カル」に「スバラシイ!」と讃えることを忘れない、とても純粋で優しい若者たちでした。