バッキングについて

 先日ご紹介した寒がりのO島は、単刀直入というか歯に衣を着せない物言いをするタイプで、そのO島から僕のギターについて次のようなことを言われたことがありました。
「Y口さんのギター、バッキングはまあまあなんですけど、ソロがいまいちですね・・・」。
 う〜ん、ほんとうに痛いところを突いてくる後輩である。たしかに僕はどちらかといえばバッキングに比べてソロは苦手だし、ギタリストに対して「かっこいいソロが弾けてなんぼ」という見方が支配的であることは否めません。
 しか〜し(と急に大声になるけど)、僕が声を大にして言いたいのは、バッキングの重要性を軽く見てもらっては困るということなのであります。優れたギタリストは、バッキングにおいても、いやソロなど弾かなくても、十分ギターを「うたわせる」ことができるのです。
 それが証拠に、例えばビートルズの「オール・マイ・ラヴィング」におけるジョンのバッキング。弾いたことある人なら納得いただけると思うけど、あの3連ストロークがいかに難しいか(僕は必ず途中でピックを落っことしそうになります)。それをジョンはコンサートなどでも「さらっと」いとも簡単に弾いてるし、しかも”remember I'll always be true”のところでコードがDからB7にいくところでは、思い入れたっぷりに強弱までつけているのだから脱帽です。
 それから同じくジョンの「キャント・バイ・ミー・ラブ」におけるバッキング。いってしまえば、ただ愛器ギブソンJ160Eをじゃっこらかき鳴らしているだけなのにどうしてあのようにノリのある味わい深い演奏ができるのでしょう。例えば曲の出だし、ポールが「キャン・バミ・ラア〜」と歌うとき、ジョンのストロークだけがEmのアップストロークで「半拍フライング」しています。たったこれだけのことなんだけどスピード感が全然違ってくるんですよね。ほんとうにジョンのバッキングは、センスがいいとしかいいようがありません。
 ちなみにこの「半拍フライング(と勝手に僕が命名してしまったけど)」はジョンのバッキングの特徴で、もう一例だけあげれば、名曲「ひとりぼっちのあいつ」の出だし、「メキンノー・ヒズ・ノウェアマン」のところのF#mがやっぱり半拍フライング。一瞬の出来事なんだけど、この「ジャッ」というたった半拍のアップストロークがカッコ良すぎます。
 以上、ビートルズの話しをしていると止まらなくなるのでこのくらいで止めるけど、かようにバッキングというのは曲の「空気感」というか「雰囲気」を支配するものであり、ビートルズでいえば中期くらいまでのサウンドは、間違いなくジョンのバッキングに負うところが大きかったといっても過言ではないでしょう(エレキのリッケン325よりもギブソンのJ160Eの方がレコーディングで多用されています)。
 ということで皆さま、もう少しバッキングに注ぐまなざしを暖かくしていただきたいと切にお願いする次第です。と同時に後輩諸君へのアドバイス。ソロの練習ばっかりやらないで、カッティングやコードストローク、それからアルペジオなんかの練習もしっかりやらないとだめだよ。ドライバーの練習ばかりしてたって、ゴルフがうまくならないのと同じだよ。