10日ぶりのシャワー

 琉大祭の準備もいよいよ佳境に入ってくると、作業も深夜におよぶこともしょっちゅうで、そのまま会場である教養棟の教室に寝泊りする部員も少なくありませんでした。
 僕もなんだかんだ忙しくってフロに入る気さえ失せてしまったことがあります。今だったら加齢臭なども加わってたまらないだろうけど、当時は「くさい」なんて言われたことはなかったし、みんな同じようにくさかったので(たぶん)全然気になりませんでした。
 それでも10日ほど経過すると、こびりついた垢(あか)やフケでなんとなく身体が重くなってくるし、何よりフロに入っていないことをキリ短同級生のみゆきちゃんに告げたら、まるで汚いものを見るような(だってほんとに汚かったし)視線を投げられたこともあって、ある日の昼間、これはフロに入らねばと決意することとなりました。
 僕は寮生で昼間はシャワーが使えなかったので、やむなく同じ高校から琉大へ進学した友人が住むアパートへシャワーを使わせてもらおうと訪問。ところがその友人、せっかくシャワーを借りに来てあげたのに不在であったため、僕は仕方なく開いていたトイレ兼シャワー室の小さい窓から忍び込んで勝手にシャワーを浴びさせてもらったのでした。慌てたのは僕の入浴中に突然その友人が帰宅した時で、友人はただでさえくりっとした大きな目をさらに大きく見開いてたいへんに驚いておりました(すばる=その目のくりっとした友人のあだ名、あの時はほんとにごめんよ)。
 さて、久しぶりのシャワーはほんとうに気持ちよく、まるで身体に羽が生えたように軽くなった気がしたものです。人生においてあれほど爽快な風呂あがりを僕はそれ以前においても以後においても知りません。
 ただ、あれだけ愛用し、お世話になっていた汗と汚れと泡盛のたっぷり染み込んだRFC所有の毛布に対する愛着が、その日からすっかり失せてしまったのが申し訳なかったけれど・・・。