スタッフ分担

 僕が在籍していた頃のスタッフ分担には、①PA②セッティング③照明④進行⑤受付の5つがありました
 在部中、僕が担当していたのはセッティング。入部当初、先輩から「お前はセッティングをやってくれ」みたいに割り振られて以来、卒業までずっとセッティング。だから僕はPAや照明のこととなるとまるで門外漢、「生涯一セッティンガー」なのであります。
 だから僕の場合、例えばPAの人たちが、「チャンネル」だの「ゲイン」だの「カエシ」だの理解不能な専門用語を駆使しながら、音の出具合を確認したり、コンソールに装丁されたたくさんのツマミを神経質にいじくったりする様子を、半ば尊敬、半ば羨望の眼差しを持って眺めていたのでした。
 照明についてもそう。「ホリゾン」だの「メツブシ」だのこちらも専門用語を交わしながら、カチャカチャとスイッチをいじくってステージを華麗な光で彩るさまは、いかにも「コンサートスタッフ」という風儀が漂っていてかっこよかったものです。
 恥をしのんで打ち明ければ、僕は、310においてさえも、マイクやキーボードをアンプやミキサーにつないでスピーカーから音を出すという基本的なことさえできなかった極度のPA音痴。何と何をどうつなげば音が出るのか、その基本的な原理さえ理解することなく卒業してしまったのです。結局、310であれだけ練習したにもかかわらず、僕がマスターしたのは、自分の担当楽器だったギターとエフェクターをアンプにつなぐことだけ。僕の理解の外にあったマイクやキーボードの音出しについては、当然それを知っている他のメンバーに、いつも丸投げしていたのでした(ごめんなさい)。
 そんなわけで、宅録でもやってみようかなと数年前に思い切って購入したコルグのデジタルMTRは今でも「ブタに真珠」状態、マニュアルを何度読んでもチンプンカンプンです。こんなことなら、もう少しRFC時代にPAの「いろはのい」でも学んでおくべきだったと、「生涯一セッティンガー」は悔やんでも悔やみきれないのであります。