G堅さんとユヌスさん

「幸福になる最良の方法は、他者の幸福に貢献することである」。
何かの折に読んで以来、強く印象に残っていることばです。それから「人が一生を終えて、後に残るのはその人が集めたものではなく与えたものである」ということばもそう。それから「世の中から何かを得ようと思ったら、まず自分から世の中に何か贈りものをしなさい」ということばも、ほとんど同じ主題を奏でる変奏曲といってもいいでしょう。
 たしかに、齢も不惑まで重ねると、「集める」ことより「与える」ことの大切さを痛感する経験も少なくありません。ただ、僕の場合、痛感するだけで、なかなか実践に結びつかないのが情けないけれど・・・。


 さて、「物乞いにも融資する」といわれるほど貧民者向けの少額融資に特化してきたバングラデシュグラミン銀行と、同行総裁のムハマド・ユヌスさんにノーベル平和賞が授与されることが決まりました。このユヌスさんのような人こそが、まさに上述の生き方を体現した人であり、したがって僕は、ユヌスさんとグラミン銀行のこれまでの取り組みと今回のノーベル賞受賞に、最大限の敬意と賛辞を惜しまないのであります(偉そうに僕なんぞが敬意と賛辞を惜しまなくても別に何ということはないけれど・・・)。


 さて、琉球大学フォークソングクラブ(RFC)っていう「場所」が、どうしてあんなに居心地がよかったのかということをつらつら考えるに、「そこではつねに部員同士のさまざまな有形無形の『贈りもの』のやりとりがあったから」と考えるのはロマンティックに過ぎるでしょうか。
 例えばG堅さん。貧乏でエレキギターなんかとても買えなかった僕に、愛用のレスポールエフェクターやミニアンプをそっくり譲ってくれたのはG堅さん。いっしょにポスター貼りのアルバイトをしてくれたり、ご飯を食べさせてくれたり、免許はもちろん車を持たない僕をあちこち運んでくれたのもG堅さん。もちろんそんな有形の贈りものばかりでなく、いつも自分のことより周りを気遣い、優しい言葉や激励の言葉や時には叱咤の言葉をかけることを忘れない先輩でした。もちろん僕ばかりでなく、部員みんなに。まさにG堅さんも、ユヌスさん同様、「与える人」でありました。
 もちろんG堅さんだけでなく、RFCというところには不思議とそのようなメンタリティを持った先輩や同輩、後輩たちがたくさん集っていたような気がします。だから僕の場合、ほとんどもらいっ放し、贈りものの受け払い残高が完全にマイナス(贈られたもの>贈ったもの)の状態です。
 というわけで、G堅さんたち「与える人」のふるまいを、カケラでも見習えたらと気持ちを新たにしている今日このごろです。