Mr.Oタについて

 僕が出会った数々の先輩の中であやしいといえばあまりにあやしかったのがO田さん。長崎出身で年次は僕より1コ上。そのあやしさはほとんど言葉には尽くし難く、強いて述べるなら、ただ「あやしい」としか言いようがないのです(わかりにくくてごめんなさい)。
 O田さんは、年がら年中ブルース・リーがはいていたような中国靴を履いていました。あのような靴をO田さんはどこで購入しているのだろう、そもそもどこであのような靴が販売されているのだろう。僕にはとても不思議でした。
 O田さんは、いつも僕を怒るくせに、ある日突然自分のアパートに僕を招いてくれました。そして晩飯を作ってやるということで、僕はいったいどんなあやしい料理を作るのだろうと期待と不安をないまぜにしていたところ、意外にふつうのチキン・ソテー、しかもそれがとても美味だったのです。
 僕はそんなO田先輩を、敬意と愛情を込めて「ミスターOタ」と呼ぶことにし、その生態を似顔絵とともに日誌に記録することにしました。O田さんが笑うと「ミスターOタ、笑う」と日誌に書き、O田さんが怒ると「ミスターOタ、怒る」と日誌に書き、O田さんが喜ぶと・・・以下同文。なのにO田さんは一度も怒ることはありませんでした。
 そして、結局O田さんはいつのまにか学校を除籍になってしまいました。
 そんなO田さんは、今でも、ほんとにたま〜に電話をくれます。ほとんど10年に1回ぐらいのペースですが、いちばん最近の電話は今から2年前くらいに「結婚したから年賀状をくれ」という電話。しかし、あて先はO田さんではなく結婚されたと思しき女性宛にせよとのこと。
 ね、あやしいでしょ。