ギタリスト列伝(1) I村さん

 いいギタリストとは?
 私見を述べれば、それは「『うたごころ』と『表現力(技術)』を併せ持ったギタリスト」ということになるでしょうか。これは、何もギタリストだけではなく、すべての演奏について評価を行う際の、僕のモノサシです。したがって、僕は、きゃらきゃら早弾きするだけの超絶技巧優先のギタリストや、えんえん泣いているだけの感情過多のギタリストを評価する習慣を持ちません(「じゃあ、おまえはどうなんだ?」という痛いツッコミは入れないように・・・)。
 I村さんのギターは、ただ「鳴っている」だけではありませんでした。I村さんのギターは、いつも「うたっていた」のです。その意味では、I村さんは文句なしに「いいギタリスト」、RFCが誇る名ギタリストでありました。
 I村さんのギターについては、上述した「うたごころ」と「表現力」という要素に加え、もうひとつ「音色」という要素も見逃すことはできません。僕が310でピアノのおけいこなどをやっていると、ときおりI村さんがふらっとやってきて、名器「Jugg-Box」のツマミをさわっては、黙々と音をつくりこんでいた光景を思い出します。それが結実したのが、あの、メロウで、ジェントリーで、コシのある、誰にも真似できない「こだわりの音色」・・・。もちろんエフェクターは使っていたけれど、I村さんは、そのようなイクイップメントには、「頼りすぎもせず、頼らなすぎもせず」といった姿勢ではなかったかと思います。
 そのI村ギターの清華ともいえるのが、アラミスの「スロー・バラード」におけるギター・プレイ。曲自体もたいへんに素晴らしかったけれど、この曲を不動の名曲たらしめたのは、間違いなくI村さんの名ソロに負うところも大きかったと思います。楽曲の良さを少しも損ねることなく、出しゃばりすぎず、そうでありながら、そのたっぷりとした「うたいぶり」がいつまでも心に残るソロ・・・。それは、まるでK太さんのうたに対するI村さんの「返歌」のよう・・・。このギターソロをきくたびに、僕は感動せずにはいられませんでした。ここに、I村ギターの真骨頂をみるのは、おそらく僕だけではないでしょう。