コンパのおもいで(4) 乾杯の作法

 これは、僕ら琉大フォーククラブ(RFC)独自のローカル・ルールなのかもしれませんが、乾杯の時は「必ずグラス(僕らはたいていプラスチックの使い捨てコップだったけれど)の口を先輩より低くすること」という絶対に遵守すべき作法がありました。これを守らない場合、先輩の機嫌をかなり損ねることになるため、いくら酔っ払っていてもこの作法だけはみんなしっかりと守っていたのでした(というよりパブロフの犬と同じ条件反射)。
 おもしろいのは同輩との乾杯の場面で、みんなでその流儀を共有しているため、同じレベルの人間同士(たとえば同級生同士)の乾杯となると、それが礼節とばかりにみんなが自分のコップの位置を少しでも他の人より低くしようとするため、みんなのコップがだんだんと床に着いてしまうくらい低くなること。最後はみんなが床に着いた状態で酒をこぼしながら「乾杯」なんて・・・。
 それにしても、習慣の刷り込みとはおそろしく、僕の場合、不惑を過ぎた現在に至ってもその作法から脱却できずにいます。卒業以来、それこそ数え切れないぐらい酒宴の席には出ているけれど、自分より同輩あるいは後輩の人間が、平気でグラスの口を自分のそれより高くすると、脳ミソが「こいつ、失礼なやつ」と反応してしまうのが情けない。いうまでもなく、このような作法はあの頃だけの期間限定、場所限定、サークル限定でしかないのに・・・。 裏返せば、若い時にしっかりとした作法を身につければ、それは一生ものだということを示す好例だと思います。うん、これは子育てに応用できる原理かも。