シーサイド・ストーリー

 琉大フォーククラブ(RFC)の夏の恒例行事のひとつに「ビーチ・パーティ」という沖縄ならではのイベントがありました。太陽、海、浜辺、潮騒、バーベキュー、酒、そして気の合った仲間たち・・・、ほんとうにこれ以上はないという夏のアイテムが勢ぞろい。ふだんダンボールに乗っかってショぼいコンパばかりやっている僕ら男性部員にとって、このいかにもドラマが始まりそうなシチュエーションは、意中の女性への「告白(あるいは告白され)→同意→交際開始」といった、あり得ない「真夏の夜の夢」をひたすら夢想させるに十分でした。
 たいていの部員たちが、それを夢想のまま終わらせる中、はじめて参加したビーチ・パーティで、大胆にもそれを現実にしたのが、僕らと同級生のS吉とTまちゃん。後に「シーサイド・ストーリー」としてRFC内で語り草となった物語の主人公です。僕もおぼろげながら、夜の砂浜を遠くに歩いていく二人の姿を覚えているよう気がします(それともこれは僕が勝手に頭の中で作り上げたイメージなのかもしれません)。
 部内的には、「TまちゃんがS吉をそっと酔っ払い集団から連れ出して告白」ということになっていたけれど、ひょっとしたらなかなか告白しないS吉にTまちゃんが業を煮やしたというところもあったのではないか、そう僕は勝手に推測しているところです。
 その後、二人は仲良く交際を続け、3年時から卒業までの2年間「TEKE^2」というバンドも組み(このバンドについても、いつか述べることになるでしょう)、卒業後すぐに結婚ということになりました。もう23年前も前の遠い夏の日の物語、すべてはあの砂浜ではじまったのです。
 表記の曲は、詞・曲ともTまちゃんによるオリジナル。おそらくこのビーチ・パーティでの想い出を綴ったであろう幸福感あふれる秀曲です。