Y内じっと余を見る

 「君うた」コンサートか何かのポスター貼りを終えたある夜のこと。みんなで国際通りのモスに立ち寄っておいしいハンバーガーに舌鼓を打っていると、ひとりY内だけが何も食べず、何も飲まず、ひたすらぼお〜っとすわっているではありませんか。「なぜ食わない?」と理由を尋ねれば「カネがない・・・」との由。
 そうなんです。Y内といえば人一倍の食いしん坊なのに、人一倍貧乏だったのです(それでもなぜか「ジュリスト」だけは毎月購入してたけど)。これが那覇のまちじゃなく近所であったなら、さっさとアパートに帰って空腹をまぎらすこともできたでしょう。ところが当夜はみんなで乗り合わせてのポスター貼り、自分だけ先に帰るということもかないません。
 なんてかわいそうなY内。なのに僕は、「ふ〜んそうなんだ(はふはふ)。カネがないのか(むしゃむしゃ)。そうかそうか(ばくばく)。それはたいへんだなあ(がつがつ)」と彼の窮状などどこふく風、ひたすらおいしいテリヤキバーガーをY内の目の前でほうばり続けたのでした。
 そしてY内はといえば、その間「じぃぃぃっ」と穴のあくほどに僕の口元を見つめ続けているくせに、僕がその熱い視線に気付き、「なんね?」とY内の方を見れば、「オレ見てないもんね」とでもいうかのように、すかさず視線をそらすのでした。その夜、結局僕たちはこの「ぱくぱく→じぃぃぃっ→なんね?→オレ見てないもんね→ぱくぱく→じぃぃぃっ→なんね?→オレ見てないもんね」を10回ほど繰り返したでしょうか。
 当時の僕も同じような境遇だったはず。ならばどうしてあの時救いの手を差しのべなかったのか。それが人の道というものではなかったのか。貧すればここまで鈍してしまうのか。僕は悔やんでも悔やみきれないのでありました。
 なあY内、この次会ったら二人でテリヤキバーガー食べに行かないか。僕らの青春にけりをつけるために・・・。