U崎のダンディズム

 同期のU先は、自作の歌をギター一本で紡ぎ出し、歌を歌えば音程は定まらず(ごめん)、安吾の「堕落論」を愛読し、コンパのときは、静かににこやかに人の話に耳を傾け、とことん酒にはつき合い、決して多くを語ろうとはしませんでした。
 おまけに僕らの年次で琉大祭のフィナーレ(部員みんなで合奏・合唱するやつ、今もそんなことやってるのかなぁ)を担当したとき、彼が選んだ曲は、なぜかマッチの「すにーかーブルース」。「え〜、マッチかよ」、「歌謡曲なんてダサ〜」、「他にいくらでもいい曲あるんでないの」といった周囲の雑音にもいっこうにお構いなし、「マッチでいいさ」と涼しく自分の主張を通すのでした(実際、演奏してみるとこの曲とてもよかった。特に「ベイビー、すにーかーブルース、ベイビー」と繰り返すところは絶品、U崎の慧眼おそるべし)。
 かように、U崎は自分のスタイルを、さりげなく、押しつけがましくなく貫き通すという意味では、たいへんにダンディーな男でした。様子のよさなどとは次元の違う、男ぶりのよさみたいなものを感じさせてくれる男でした。
 僕はそんなU崎に、たったいちどだけ、部内コンサートのときに僕が自作した失恋ソングを歌ってもらったことがありました。一回こっきりの演奏だったけど、僕は自分がこしらえた歌をU崎に歌ってもらってとても幸せでした。U崎、あのときはほんとにありがとね・・・。